酔って自己嫌悪しているあなたへ
酒を飲み、そして酔う。
ああ、飲み過ぎだ。他の人もいるしこれ以上飲んでしまうと、自分を失い、大はしゃぎしてしまう。
誰かが何かを話したそうにしていることは知っているのに、自分ばかりが話してしまう。
それはわかっているのに、衝動を抑えきれない。
ああ、ほら、暴走している僕をたしなめようとする人が、僕に対して『おこごと』を言い始めた。
それに対しては謙虚に反省しなければならないことはわかっているのだけれど、でもムカッ腹を立てて反論してしまう。
そのうち、気分が良くなってきて、下ネタを言ったり、偉そうな人の頭をペチペチ叩いたりして、記憶が途切れ途切れになり、服を脱ぎ始めたりして、みんな大笑いするけれど、決して僕は愉快ではない。
誰かに肩を担がれて、帰宅の途につく。
Yシャツの胸ポケットに二千円を突っ込まれて、タクシーに乗せられる。
帰宅して、冷たい水を飲み、布団に倒れ込む。
次の日に、方々に頭を下げてまわる。
『失礼しました』
『ご迷惑をおかけしました』
そして、具合の悪い体をひきづって、満員電車に乗り込み、最寄り駅について、冷たい空気を胸一杯吸い込む。
ああ、僕はなんてことをしてしまったのだろう。
自己嫌悪に世の中が真っ暗になる。
謝ったときに
『おまえ飲み過ぎなんだよ』と
言った、Aさん。
謝ろうとして、僕を避けて
謝罪の言葉すらかけられなかったBさん。
自己嫌悪が、すっぽりを僕を包む。
『おまえみたいな奴がいるから、俺はね、社会人になって、たいして話すこと無い同僚の飲み会に行きたくなるんだよ』
と、言ってくれたCさん。
様々なことを考えながら、帰宅して
嫁の作った飯を食い
ベランダで、たばこを吸う。
昨日、たばこを吸いすぎて喉が痛いのもかまわずたばこを吸い、なんとなく空を見上げてみると星が見えて、月はある。
星の動きに、心を巡らし
ああ、人間がやってることなんて
ちっぽけなもんだ、と
実のところ、ぜんぜんちっぽけでないのに
自分を慰めるためにそんなことを思って
たばこの吸い殻を携帯灰皿に押しつけて
ひとつ、くしゃみをして
布団に潜り込む。
……というようなことを経験して
酒を飲んで自己嫌悪に陥っている人々へ。
それで、いいのだ。
そうやって、人生は続くのだ。